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観光開発国際協力、発展途上国への貢献

観光開発は地域開発の有効な一手段である。しかしそれは、諸刃の剣でもある。
観光開発には、経済効果に加え、住民の誇りの醸成やアイデンティティの再認識を期待することができる。発展途上国においても、その豊かな自然や固有の文化をいかした観光開発が試みられている。しかし、技術や経験、人的資源が不足している国々にとって、その試みを地域の発展に結実させることは難しい。さらには、地域住民の関与なきままに進められる外発的な観光開発や、利潤追求に偏重した「人間不在の観光開発」が、地域の伝統的な文化の変質や地域住民の絆の弱化を招く危険性までも有するのである。
そうした危険を回避し、「人間不在の観光開発」を克服するためには、まず地域住民自身が、損なわれてはならない地域の価値を認識することが重要であると私は考える。それも、地域住民の生活から生み出され、それと一体となって現在まで存続してきた遺産を評価することにより、地域住民の存在を遺産価値に位置づけることが必要である。そのような価値付けは、単なる自然や建造物などの特性を評価したものとは異なり、地域住民自身がその価値の創造主体であり、継承主体であることを明確にするからである。そのようにして価値が認識されて初めて、その価値とともに住民の生活を発展させるような遺産および観光マネジメントに対する指針が得られ、解決すべき課題も明確になる。
途上国における様々な地域は、当然日本とは異なったコンテクストを有する。そのため、日本で行われている方法をそのまま適用しようとしても破綻を招くのみである。しかし、日本が培ってきた遺産マネジメントの理念や目的、方法を選択する際の考え方といった根幹的な部分を共有しつつ、支援することは可能であると考える。
フィールドワークによる実践的な研究を通じ、学院の多くの仲間とともに知恵を出し合い、切磋琢磨しつつ、世界のある地域の人々が少しでもより幸せになったと感じることができるような国際協力を推進できることを心から願っている。

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